近年、多くの企業がEDRやログ監視ツールを導入し、「攻撃の検知」は以前よりも格段にできるようになっています。「うちは最新のツールを導入したから、もう安心だ」……そう思っている企業の方も多いかもしれません。
しかし、その一方で、「検知はできていたのに被害を防げなかった」というケースも増えています。多くの企業が陥る「セキュリティ対策の落とし穴」は、ツールを入れた後にやってきます。
例えば、次のような状況です。
にもかかわらず、実際の対応が遅れ、結果として情報漏えいや業務停止に至ってしまう。
これはなぜ起きるのでしょうか。
結論から言えば、「検知」と「対応」は全く別の能力だからです。ツールを入れるだけでは守れない理由が、ここにあります。
「インシデント対応」とは、セキュリティ上の異常(インシデント)が発生した際に、被害を最小限に抑え、原因を特定し、再発防止まで行う一連の対応を指します。
具体的には以下のような流れです。
| 検知(アラートの発生) | |
| トリアージ(重要度の判断) | |
| ↓ 膨大なアラートから、緊急性の高いものを選別する。 | |
| 初動対応(隔離・遮断など) | |
| ↓ 感染したPCをネットワークから遮断する。 | |
| 調査(原因・影響範囲の特定) | |
| ↓ どの端末が、いつ、どこに通信したのかログを解析する。 | |
| 復旧(業務の正常化) | |
| ↓ ウイルスを削除し、システムを正常な状態に戻す。 | |
| 再発防止(対策の見直し) | |
| 報告書を作成し、経営層や外部機関へ、被害状況を報告なども必要になる。 |
この一連の流れを、迅速かつ正確に行う必要があります。
しかし中小企業においては、以下のような課題が多く見られます。
つまり、「何をすればいいか分からない」「対応できる人がいない」という状態です。
あるいは、情シス担当者が「とりあえずPCのLANケーブルを抜く」といった場当たり的な対応に留まり、根本的な原因究明まで手が回っていない状態だったりします。その間に、攻撃者はネットワーク内を自由に動き回り、機密情報を盗み出していきます。
これらが、「検知しても守れない」最大の理由です。
現場では、次のような状況が現実的に起きています。
| ■ケース①:アラートが多すぎて放置 |
EDRやSIEMから大量のアラートが上がるが、どれが重要か分からず、結果的に放置してしまう。
| ■ケース②:対応が後手に回る |
担当者が他業務と兼任しており、気づいたときにはすでに被害が拡大している。
| ■ケース③:判断ミスによる誤対応 |
本来は緊急対応が必要なインシデントを軽視してしまう、あるいは逆に過剰対応して業務に影響を出す。
| ■ケース④:ログはあるが分析できない |
ログは蓄積されているものの、どこを見ればよいか分からず、調査が進まない。
これらはすべて、「運用体制が整っていない」ことに起因しています。
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ケース①の具体例です。 最新のセキュリティツールは、少しでも不審な動きがあれば「アラート(警告)」を発します。しかし、その中には「実害のない誤検知」も大量に含まれています。
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これが、多くの現場で起きている「アラート疲れ」の実態です。
「検知しても、対応できない」のであれば、それは「守れている」とは言えません。
こうした課題を解決する考え方の一つが、「SOAR(ソアー)(Security Orchestration, Automation and Response)」です。
SOARとは、セキュリティ対応の一連の流れを「整理・自動化・効率化」する仕組みです。
主な機能は以下の通りです。
例えば、
「不審なログインが検知されたら → 該当アカウントを一時停止 → 管理者へ通知」
といった対応を、自動で実行することができます。
これにより、人的リソースが限られていても、一定レベルの対応を迅速に行うことが可能になります。
攻撃のスピードは、人間の判断速度を遥かに超えています。
昨今のサイバー攻撃は、AIやボットを使って自動的に脆弱性を探し、数分、時には数秒単位で攻撃を完了させます。人間が「メールのアラートに気づいて、上司の承認を得てから、ネットワークを遮断する」というスピード感では、間に合わないのです。
セキュリティ運用に自動化(SOAR)を取り入れることは、単なるコスト削減ではありません。 「検知から対応までの時間(MTTR:Mean Time To Respond)」を劇的に短縮し、被害を最小限に抑えるための攻めの守りなのです。
【自動化による対応のステップ】
これまでのセキュリティ対策は、「何を入れるか」が中心でした。
しかし現在は、それだけでは不十分です。
「セキュリティツールを買うこと」は、防火扉を設置することに似ています。しかし、「運用を考えること」は、火災が起きた時に避難誘導し、消火器を使い、消防署に通報する訓練をすることと同じです。
防火扉(ツール)だけあっても、誰も消火活動(運用)をしなければ、会社は全焼してしまいます。
重要なのは、「入れた後、どう使うか」です。
具体的には、
といった「運用」の部分が、セキュリティの成否を大きく左右します。
ツールはあくまで手段であり、運用が伴って初めて意味を持つのです。
(参考)EDRとは?ウイルス対策ソフトとの違いをわかりやすく解説|中小企業のエンドポイント対策
とはいえ、中小企業が大企業のような体制を整えるのは現実的ではありません。
そこで重要になるのが、「無理のない運用設計」です。
具体的には以下のようなアプローチが有効です。
| ■①対応ルールの明文化 |
| 「どのアラートが来たら何をするか」を簡単でもよいので決めておく。 |
| ■②優先順位の整理 |
| すべてに対応するのではなく、「重要なものから対応する」基準を作る。 |
| ■③外部サービスの活用 |
| SOCやMDRなど、専門家による監視・対応サービスを活用する。 |
| ■④自動化の活用 |
| 可能な範囲で、対応の一部を自動化する(SOARの考え方)。 |
これらを組み合わせることで、「対応できない状態」から脱却することができます。自社で全てを抱え込むのではなく、「システムで自動化する部分」と「プロに任せる部分」を切り分けることが、持続可能なセキュリティへの近道です。
(参考)SOCとは?中小企業に監視体制は必要か|SIEM・MDRとの違いも解説
今回のポイントは明確です。
「検知できるだけでは守れない」
むしろ、
といった状況こそが、現在の多くの企業の課題です。
だからこそ、これから必要なのは、
「運用まで含めたセキュリティ対策」です。
ツールの導入で満足するのではなく、
という視点で、自社の状態を見直してみてください。
それが、「守れる会社」への大きな一歩になります。
「検知した後に、誰が動くのか?」
この問いに即答できない場合は、ぜひ一度、自社の運用体制を見直してみてください。
LYSTでは、貴社の運用体制見直しのお手伝いや最適な対策のご提案も可能です。
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