台風や大雨による自然災害、作業中の事故、取引先からの損害賠償請求など、企業を脅かすトラブルのニュースを目にするたびに、「自社もBCP(事業継続計画)を立てなければ」と感じている中小企業の方は多いのではないでしょうか。
しかし、社内のリスク対策にはさまざまなものがあります。 防災用品の備蓄、避難訓練、安全マニュアルの策定、設備の点検、従業員教育など、すべてを一度に徹底しようとすると、費用も時間もかかります。
そのような中で、選択肢の一つとなるのが法人向けの損害保険(法人損保)です。
「法人損保」には、企業財産、休業、賠償責任、従業員の事故など、それぞれ異なるリスクに対応する保険があります。
重要なのは、やみくもに多くの保険へ加入することではなく、自社にとって経営への影響が大きい事故を見極め、必要な補償を組み合わせることです。
今回は、法人損保の基本的な考え方と、中小企業が保険を選ぶ際に確認したいポイントを解説します。
法人損保は「一つの保険」ではない
「法人損保」という名前の保険商品が一つだけ存在するわけではありません。
一般には、企業や個人事業主が事業上の事故や損害に備えて加入する、さまざまな損害保険をまとめて「法人損保」と呼んでいます。
企業を取り巻くリスクには、主に次のようなものがあります。
✖️ 建物、設備、機械、商品などが損害を受けるリスク
✖️ 事故や災害によって営業を継続できなくなるリスク
✖️ 顧客や取引先などに損害を与え、賠償責任を負うリスク
✖️ 従業員が業務中にケガや病気をするリスク
✖️ 社用車による交通事故のリスク
✖️ 情報漏えいやサイバー攻撃によるリスク
日本損害保険協会も、企業が備える主な分野として、企業財産、経営者・役員、従業員、事業中断・利益減少、賠償責任、社用車のリスクを挙げています。
すべての企業に同じ保険が必要なわけではありません。
店舗を持つ企業、製造設備を持つ企業、建設工事を行う企業、オフィスでサービスを提供する企業では、事故が起きたときの影響が異なります。まずは、自社にどのような事故が起こり得るかを整理することが出発点になります。
中小企業が確認したい4つの経営リスク
法人損保を検討する際は、保険商品を先に選ぶのではなく、会社を取り巻くリスクを分野ごとに確認すると分かりやすくなります。
ここでは、多くの中小企業に関係するリスクを4つに分けて見ていきます。
| 1. | 建物・設備・商品などの「財物リスク」 |
火災、落雷、台風、大雨、水漏れ、盗難などによって、会社が所有・使用する財産が損害を受けるリスクです。
対象となる財産には、次のようなものがあります。
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事故後に必要となるのは、新品への買い替え費用だけとは限りません。
設備の修理費、建物の修繕費、残存物の撤去費、清掃費、代替設備の手配費など、復旧までにはさまざまな費用が発生します。
保険を確認するときは、「何が対象になっているか」に加え、「修理や再取得に必要な金額をどこまで補償できるか」を確認することが重要です。
| 2. | 営業停止による「休業・利益減少リスク」 |
建物や設備の修理費を確保できても、事業を再開できるまでに数週間、数か月とかかれば、その間の売上や利益が減少します。
一方で、営業を休止している期間も、次のような支出は続きます。
➖ 従業員の人件費
➖ 事務所や店舗の家賃
➖ 借入金の返済
➖ リース料
➖ 通信費やシステム利用料
➖ 取引を維持するために必要な費用
さらに、営業再開を早めるために、仮店舗の設置、代替設備のレンタル、外注の利用などが必要になる場合もあります。
このような損失に備えるのが、休業損害や利益損失、営業継続費用に関する補償です。
「建物には保険を掛けているから大丈夫」と考えるのではなく、事業が止まった場合の資金繰りまで確認する必要があります。
(メモ)三井住友海上(LYSTは代理店です)の事業活動総合保険「ビジネスキーパー」でも、財物損害と休業損害を選択して補償する仕組みが用意されています。
| 3. | 顧客や取引先に対する「賠償責任リスク」 |
事業活動の中で第三者にケガをさせたり、物を壊したりすると、企業が法律上の損害賠償責任を負うことがあります。
例えば、次のような事故です。
| ❌ 店舗の床で顧客が転倒し、ケガをした ❌ 会社の看板や設備が落下し、通行人や車に損害を与えた ❌ 工事中に隣接する建物や設備を破損した ❌ 販売した食品によって食中毒が発生した ❌ 納品した製品の欠陥によって事故が起きた ❌ 提供したサービスの不備によって取引先に損害を与えた |
賠償責任保険には、施設の管理に関する事故、製造・販売した商品に関する事故、請負作業中の事故など、対象となる業務や事故に応じた種類があります。
そのため、「賠償責任保険に入っている」というだけでは十分とは限りません。
自社が行っている業務、扱っている商品、作業場所、顧客との契約内容などに対して、補償範囲が合っているかを確認する必要があります。
(メモ)三井住友海上(LYSTは代理店です)では、こうした事業活動に伴う賠償責任リスクに備える保険として「ビジネスプロテクター」があります。施設管理上の事故や、仕事・商品・サービスに起因する損害賠償リスクなど、事業内容に応じて備えを検討する際の選択肢の一つです。
| 4. | 従業員の事故に関する「業務災害リスク」 |
従業員が業務中や通勤中にケガをした場合、原則として政府の労働者災害補償保険(労災保険)による給付の対象となります。
しかし、事故の内容によっては、会社が従業員や遺族から安全配慮義務違反などを理由に損害賠償を請求される可能性もあります。
また、会社として独自に見舞金や補償金を支給したい場合もあるでしょう。
民間の業務災害補償保険では、契約内容に応じて、従業員の死亡、後遺障害、入院、通院などに対する補償や、会社が負担する損害賠償責任・訴訟費用などに備えることができます。
現場作業がある企業だけでなく、営業活動での移動が多い企業や、従業員の福利厚生を充実させたい企業にとっても確認しておきたい分野です。
(メモ)三井住友海上(LYSTは代理店です)の「ビジネスJネクスト」も、従業員等の業務上の災害に伴う費用や損害賠償リスクを対象とする保険です。

必要な保険は業種によって変わる
法人損保を選ぶときに、「中小企業向けの標準的なプランであれば十分」とは限りません。
事業内容によって、優先して備えるべきリスクが異なるからです。
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オフィス・サービス業 大規模な設備を持たない企業でも、顧客への賠償責任、業務用パソコンや備品の損害、事務所が使えなくなった場合の休業などが考えられます。 顧客情報や業務データを多く扱う場合は、一般的な法人損保とは別に、サイバー保険の必要性も検討します。 |
(参考)サイバー保険とは?中小企業が加入前に確認すべき補償内容と注意点
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小売業・飲食業 店舗設備や商品・食材の損害に加え、顧客の転倒事故、食中毒、火災による近隣への損害、営業停止による売上減少などが重要になります。 テナントで営業している場合は、自社の設備だけでなく、借りている建物に対する賠償責任も確認しておきましょう。 |
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製造業 工場、製造機械、原材料、仕掛品、完成品など、補償対象となる財産が多くなります。 特定の機械が止まるだけで生産全体が止まる場合は、復旧に必要な期間や代替手段も含めて考える必要があります。 |
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建設業・工事業 工事中に第三者の身体や財物へ損害を与えるリスク、従業員や協力会社の作業中の事故、工具・資材・重機の損害などが考えられます。 元請・下請のどちらの立場で業務を行うか、どのような工事を請け負うかによっても、必要な補償は変わります。 |
このように、保険を選ぶ際は、会社の規模だけでなく、業種、作業内容、保有設備、取引形態などを具体的に伝えることが大切です。
「保険に入っていたのに足りない」を防ぐ6つの確認事項
法人損保に加入していても、すべての事故や損害が自動的に全額補償されるわけではありません。
商品、契約プラン、特約、支払限度額、免責金額、事故の状況などによって、保険金の支払条件は異なります。
加入時や更新時には、少なくとも次の6点を確認しましょう。
| 1. | 補償対象となる財産が漏れていないか |
建物だけでなく、設備、什器、商品、原材料、預かり品など、自社の事業に必要な財産が対象に含まれているか確認します。
賃貸物件の場合は、建物所有者の保険と、自社が加入すべき保険を区別する必要があります。
なお、地震・噴火・津波による損害は、一般的な法人向け火災保険では基本補償の対象外となることが多いため、別途、地震に対応する特約などの確認が必要です。
| 2. | 現在の金額で復旧できるか |
建築費や設備価格、原材料価格が上昇すると、以前設定した保険金額では再建や買い替えに足りなくなることがあります。
取得時の価格だけでなく、現在同等のものを再取得する場合に必要な金額を意識しましょう。
| 3. | 事業停止による損失が含まれているか |
財物損害の補償だけでは、休業中の利益減少や固定費をカバーできない場合があります。
自社の資金で何か月間持ちこたえられるかを考え、必要に応じて休業損害の補償を検討します。
| 4. | 自社の業務に合った賠償責任が対象か |
施設管理、商品販売、製造、工事、専門サービスなど、業務によって発生する賠償事故は異なります。
補償の名称だけを見るのではなく、自社で想定される事故例を代理店などに伝え、対象となるか確認することが重要です。
| 5. | 支払限度額・免責金額・対象外となる事故 |
補償対象であっても、保険金には支払限度額が設定されている場合があります。
また、一定額までは自社で負担する免責金額や、地震・津波、経年劣化、故意による事故など、基本契約では対象外となる項目もあります。
特に注意したいのが、地震による損害です。多くの法人向け火災保険・企業財産保険では、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする建物、設備、商品などの損害は、基本補償の対象外です。地震が原因で発生した火災についても、通常の火災補償では補償されない場合があります。
また、住宅向けの「地震保険」は、事務所専用の建物や工場、店舗、事業用設備・在庫などを対象としていません。企業が地震に備える場合は、地震危険補償特約や、地震による休業損害・緊急費用を補う特約などを別途検討し、補償対象、支払限度額、免責金額を確認する必要があります。
契約の名称だけで判断せず、重要事項説明書や保険約款を確認しましょう。
| 6. | 現在の事業内容が契約に反映されているか |
保険加入後に、次のような変化が起きていないでしょうか。
✅ 新しい商品やサービスを始めた
✅ 売上高が大きく増えた
✅ 店舗、事務所、工場を増やした
✅ 高額な設備や機械を導入した
✅ 従業員数が増えた
✅ 新たに工事や製造を請け負うようになった
✅ 海外との取引を開始した
事業内容が変化しているのに、保険契約が以前のままでは、必要な補償と実態が合わなくなる可能性があります。

法人損保をBCPの中でどう考えるか
BCPでは、災害や事故が起きた際に、重要な業務をどのように継続し、どの程度の期間で復旧させるかを決めます。
連絡体制、避難方法、代替拠点、バックアップ、仕入先の確保などを準備していても、実際に復旧を進めるための資金が不足すれば、計画を実行できません。
事故後には、修繕費や設備の再取得費だけでなく、仮事務所、代替設備、外注、人件費、取引先対応などの費用が必要になる可能性があります。
法人損保は、このような突発的な資金負担の一部を外部へ移す「リスク移転」の手段です。
日本損害保険協会では、企業のリスクへの対応方法を「回避」「移転」「低減」「保有」に整理しており、保険はこのうち「移転」に位置付けられています。保険だけですべてのリスクに備えるのではなく、事故を防ぐ対策、BCP、自己資金による備えなどを組み合わせることが重要です。
保険に加入すれば、事故が起きても自動的に事業が再開できるわけではありません。
保険会社や代理店への連絡方法、社内の責任者、被害状況の記録方法、重要業務の優先順位なども、あらかじめ決めておく必要があります。
法人損保は定期的な見直しが必要
法人損保は、一度加入したら終わりではありません。
会社の売上、設備、従業員、商品、サービス、取引先などは、時間の経過とともに変化します。
少なくとも年に一度の更新時には、次の順番で確認するとよいでしょう。
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保険料の安さだけで選ぶと、本当に必要な補償が不足する可能性があります。
反対に、考えられるすべてのリスクを保険でカバーしようとすると、保険料の負担が大きくなります。
自社への影響が大きいリスクを優先し、補償内容と保険料のバランスを取ることが、現実的な保険設計につながります。
まとめ|法人損保は会社ごとに設計するもの
法人損保は、会社で起きるあらゆる事故を一つの契約で解決するものではありません。
企業財産、休業、賠償責任、従業員の事故など、事業を取り巻くリスクを整理し、自社に必要な補償を組み合わせるものです。
特に中小企業では、一度の大きな事故が資金繰りや取引の継続に与える影響が大きくなる可能性があります。
まずは、「どのような事故が起きる可能性があるか」「事故が起きた場合に、どの費用を自社だけでは負担できないか」を考えてみましょう。
そのうえで、事故を防ぐための安全対策、事業を早期に再開するためのBCP、事故後の資金負担に備える法人損保を組み合わせることが大切です。
LYSTは、三井住友海上火災保険株式会社の保険代理店として、法人向け損害保険を取り扱っています。
財物損害・休業損害などに備える「ビジネスキーパー」、事業活動に伴う損害賠償リスクに備える「ビジネスプロテクター」、業務災害リスクに備える「ビジネスJネクスト」など、企業の事業内容やご意向に応じた保険をご案内しています。
「現在の保険で何が補償されるのか分からない」「事業内容に合った補償になっているか確認したい」という企業様は、是非LYSTへご相談ください。
※本コラムは、法人向け損害保険に関する一般的な情報を提供するものです。実際の補償内容、保険金をお支払いする条件、支払限度額、免責金額、対象外となる事故などは、保険会社、商品、プラン、特約および契約条件によって異なります。ご契約にあたっては、最新のパンフレット、重要事項説明書、保険約款などをご確認ください。
