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DX2:内部環境の課題と具体策は?

更新日:2021年3月24日




前回述べた社内の経営資源の棚卸と精査において欠かせないのが、以下の項目である。


 ✔ 現状の業務内容とそのフローの把握

 ✔ 最適な人員配置

 ✔ 「何が課題で、何を改善・改革すべきか」を明確にすること

 ✔ 目的とゴールを決めること


単純に、生産性≒経費削減ではない。業務と人員配置において、見直すべきは現在のスタッフ(労働者≒社員・実務者)の資質と適正、更には今後の継続性を考慮した上での、労働環境まで含めた生産性である。





恐らくは、【図3】のように個人の価値観における志向像は、大きく4つに分類される。これにより同じ職場での業務の継続可能な人材像は、【図4】のようになる。




結果として、何が懸念されるか。



それは、優秀で能力が評価され、組織にとって必要と思われる人材ほど流動性が高くなり、見えない経営資源の一つである「個人のナレッジ」が流出してしまうことである。この人材に顧客がついている場合は、そのまま顧客を失ってしまうことにもなりかねない。これは、業種・業態に関係なく経験されている方も多いと思う。


ここでは、組織論を展開するわけではないが、DXを検討する場合に必要なのは、その組織(企業)が中・長期にわたって、人材活用、人員配置も含めてどのように事業の変革を考えるかということになろう。単純に、現在の業務そのものをデジタル化するだけではないことは確かである。遠回りのように見えても、内部環境の何をどこから改革すべきかを早急に定め、全体像をイメージするべきである。つまり、DX化は経営戦略の練り直しが急務となる。そして、組織形態の改革・改編でもあり、結果として事業そのものにプラスに機能する方向性が重要となる。



1部門(部署)の改革・改編だけでは、組織全体にマイナスに働き、機能不全や副作用が起こることもある。ある大手企業で、業務改善による生産性向上を狙って業務分散(タスクアロケーション)を実施したのだが、1部門だけの改編だったため不均衡が生じ、残業時間が部分的に偏り、その是正に相当な資源を費やすこととなってしまった。この結果、スタッフのモチベーションや生産性は低下し、逆に組織にマイナスの連鎖を引き起こしてしまったのである。



重要なのは、先に述べた通りDX化を検討する際には、一旦セクショナリズムを解消し、実務者レベルでのコミュニケーションの円滑化を図ることである。



1980年代の好調な日本企業は、組織内のコミュニケーション(風通し)がよく、社員も比較的仕事や会社に対する満足度が高い傾向にあった。バブル崩壊とともに、上下関係の歪曲や多様なハラスメントと権利の主張が顕在化し、社会問題となり、雇用主も被雇用者も双方の信頼関係と価値観が大きく変化した。かつて「外資系は成果主義で・・・」と言われ、日本の終身雇用と対峙してきたが、既に「日本的終身雇用」はどうだろうか。労働者(スタッフ)の価値観は、個人主義が優先で、個人にとって是か非かがその殆どの判断基準になってきているのではないだろうか。



また、人材不足の中で更なる生産性を追求する為に、様々な施策やサービス、システムが登場してきた。そしてその裏側には、前提条件としてデジタル技術を活用することが織り込まれている。これを自ら見事に取り入れて改革をしている企業の事例をご紹介する。



それは、「船橋屋」というくずもち屋。






商品もさることながら、組織改革・改編を見事に推進している。これまでタブーとされた「職人技」を数値として見える化し、会社全体で仕事の内容を共有し、そしてお互いが評価しあえる体制を作った。更に大胆に、中間管理職を後輩や部下が投票して評価し、それに応じて組織、部門の構成を再考するということもしている。この企業は業態そのものをDX化したわけではなく、DX化を鑑みて、人材活用も含めた人材配置を行い、生業の考え方そのものを改革していったと言える。




つづく




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