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大丈夫?「DX」、勘違いしていませんか?



オンライン会議




DXの定義:


昨今、盛んに耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)。定義については、様々な表現がされていますが、トランスフォーメーション=変革、というワードが使われているということは、デジタルを活用してトランスフォームする必要がある、ということです。企業としては、デジタルを活用して既存のビジネスを変革したり、新規ビジネスを創出することが求められます。

ここで一番重要なのは「DX≠デジタル化」、つまりDXとは単純にデジタル化(システム導入やデバイス活用)することではない、ということです。


昨年のコロナ禍の影響により、業務の「オンライン」化が認知・拡大されていきました。しかし、これはDX化ではなく単なるデジタル化に過ぎません。




「在宅ワーク」はDX?:


ある大手グループ企業に在籍する方から伺った話を紹介します。その企業の「在宅ワーク」シーンの話です。


その担当者は、「在宅ワーク」を推進するために、出勤率を50%以下にするように上長に求められ、組織内のスタッフの出勤シフトを新たに組んで、従来の業務を遂行することになりました。すると業務プロセス上、どうしてもオフィス(事業所)でなければ完了しない業務が発生し、それが大きなネックとなりました。承認フローだけであればオンラインでも完了するのですが、「押印」という作業があり、オンラインだけでは完了することが出来ません。また「郵送作業」も同様です。

ここで、デジタル技術とオンラインを活用すれば、押印・郵送作業も完結できるはず・・・ですが、この企業は日本の企業文化・商習慣上のご多分に漏れず、簡単には移行できない状況となっており、結局すべての業務の完結は、出勤しなければならないそうです。


この企業の例に見られるように、一定規模の組織企業は、「オンライン化による在宅ワーク率の向上、通勤時間の解消、残業・経費等の削減、生産性の向上」を掲げ、在宅ワーク推進に取り組むところが多いようです。しかしながらその実態はどうなのでしょうか。



在宅ワーク


2つの課題:


大きく2つの課題が挙げられます。

1つは、「在宅で仕事をする環境を整えること」です。

環境というのは、通信回線、業務に使用する端末、システム等の性能です。

通信回線は個人の生活スタイルにより格差があり、業務に支障がでる場合があります。通信量によっては、多額の費用負担が発生する事もあります。さらに、自宅での光熱費も個人の負担にかかってきます。

先の企業の例では、通勤定期費用を毎月の業務費用に充当すべく、3,000円/月が支給されているといいます。現実的には、差引くと個人負担のほうが大きく、マイナスとなっているケースもあるようです。


さらに、BYOD(Bring Your Own Device:従業員が私物の情報端末などを会社の業務で利用すること)によるセキュリティ、プライバシーのリスクの懸念もあります。


また、業務に使用する端末とシステム等の性能についてですが、モバイル環境が整えば、在宅ワークが実現する、と多くの経営層の方は認識されており、決してその認識は間違ってはいませんが、実際の現場の状況はほとんど理解されていないようです。


オンライン化によって、コミュニケーションの手段としてオンラインミーティングが広く普及しました。しかし、端末やシステム等の性能については、ある一定の条件が考慮されていないケースが多いようです。仕事におけるコミュニケーションにおいては、音声+動画(お互いの表情)+業務で使用する資料(画像)が活用されます。これは、個人のスマートフォンでのSNSの利用と異なり、大きな通信負荷が発生します。これによってモバイル端末(ノートPC等)の処理能力が追い付かず、音声が途切れる現象が起こり、スムーズなコミュニケーションが出来ずに中途半端な状況で終わるケースがあるようです。


これを解消するには、

1)PCの搭載メモリー容量を増やす、

2)音声入力と出力のオプション機器を用意する、

3)通信回線を安定且つ高速の状態に整える、

ということが挙げられます。


更には、組織内でSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)等のシステムを利用している場合は、2画面表示可能な環境に整えることも挙げられます。在宅でのワークスペースはおのずと制限があり、通常のオフィスのような作業効率は望めません。しかしもし2台目のモニターを置くスペースがあるのであれば、2台のモニターを使った「2画面」での業務環境を整えるべきです。この2画面化の稟議を社内で承認を得るために2年近くもかかっている某大企業もある、とうかがいました。



孤立

課題の2つ目は、「スタッフの『孤立』の解消」です。

通常、オフィスへ出勤している場合であれば、その職場で誰かとのコンタクトやコミュニケーションが必然的に行われます。ちょっとしたことは誰かに聞けばすぐに解消したり、適時コミュニケーションが取りたい時も、ほとんどの場合その場で解決します。

しかし、現在の「在宅ワーク」では、誰かに聞けずに保留状態となったり、個人の判断に委ねられます。

そのため、作業を放置したまま時間が経過したり、逆に責任感が強い方だと、なかなか仕事の緊張感から解放されなかったりします。


本来、働き方改革の究極の状態は、個々人が1日24時間のタイムマネジメントをしながら、個人のライフスタイル(子育てや介護、学習等)を尊重しつつ、自身に与えられた業務に集中し、そのアウトプットが組織・企業の活動へとプラスの方向に向かう事だと考えます。

そこでは通勤時間や拘束時間が固定化されず柔軟適応され、個人の心身の健康にもつながり、最大限の効果を引き出せるはずです。


しかし、実態としては実務経験の浅い状況下で心身に異常をきたす等で、心身症で休職される方もいるようです。そうかと思えば逆に、与えられたPCは立ち上げたまま、業務から離れている状況の方もいるようです。

一人で仕事をする状況での「自己管理」には様々な個人差が生まれ、それにより業務効率の低下や経営層側の管理懸念なども生まれます。


この個人に依存する要因の解消は、経営層にとっても大きな課題ではないでしょうか。


その解決の糸口としては、

1)個人単位でのスキルアップや再教育によって評価基準や体制を見直す、     

2)小グループ単位で通常業務に紐づいたテーマや課題を共有し、定期的にミーティングを実施してコミュニケーションを維持し、プロジェクト化してゴールを目指す

などの新たなマネジメントを試行錯誤していくことが必要かと思います。



ビジネストランスフォーメーション


まとめ:


冒頭でも述べたように、DXというのは、デジタル化のことではなく、従来の生業・事業・業務そのものの変容であり、新たな形態を構築していくビジネストランスフォーメーションのことです。

その為には、第一段階で経営層が新たな経営方針や戦略を元に、具体的に「何をどうするか?」を明確にアウトプットする必要があります。その際、経営層と現場側で密に連携して現状を把握し、組織全体が理解・納得した上で、同じベクトルで進めていくことです。


第二段階は、具体的実行内容に基づき優先順位を決め、それに伴うデジタル技術の有無及びその効果と目指すKPIを決めていくことです。なんとなくデジタル化を進めたり、流行りのサブスク・クラウドなどのサービスに飛びついたりすると、当初の目的や目標からブレてしまう可能性が大きくなります。実行内容が「事業」そのものに対してどのような効果を発揮するかをしっかり見極めることです。


先ずは、DXに取り組むために自社内の「何を」「どう考えるべきか?」を再考するのが肝要です。




※もっと学びたい方は、下記もご参照ください。


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